コンビニ前で小犬に吠えられ眼つけられたが、頑張って凝視してたら、ふんという顔つきで先にむこうが眼をそらしたのだ。よし、今日はなめられなかったぞう……。ちょっと気が高揚したので予約していたコンタクトレンズを取りに池袋に行った帰り、ジュンク堂に寄った。捜している本は見つからず、ついつい詩集の棚へいくと、「竹内浩三楽書(らくが)き詩集 まんがのよろずや」に目が留まる。表紙にドアがありマンガのきらいなヤツは入るべからず……とあるからには、これは入らないといけないではないか。
竹内浩三15歳……手作りの回覧雑誌を作った時々に描かれたマンガに、よしだみどりさんが色をつけて彼の詩の挿絵としている。書簡を含むどきっとするほど鋭くしかし、おおらかでひょうひょうとした詩。映画監督を目指したこの学生は学徒出陣で入営、1945年にフィリピンバギオ島で戦死した。「戦争は悪の豪華版である」と竹内浩三は書いている。
「日本が見えない」も「骨のうたう」も「ぼくもいくさに往くのだけれど」と、どきっとする彼の魂のような詩がいっぱいあるけれど、今、彼が十代で生きて書かれているのではと錯覚するような詩がある(上記の詩もみなそんな錯覚に襲われるが、彼のは自由に生きることを奪われていた時代でそれでも書いているのだ)。
よく生きてきたと思う 竹内浩三
よく生きてきたと思う
よく生かしてくれたと思う
ボクのような人間を
よく生かしてくれたと思う
きびしい世の中で
あまえさしてくれない世の中で
よわむしのボクが
とにかく生きてきた
とほうもなくさびしくなり
とほうもなくかなしくなり
自分がいやになり
なにかにあまえたい
ボクという人間は
大きなケッカンをもっている
かくすことのできない
人間としてのケッカン
その大きな弱点をつかまえて
ボクをいじめるな
ボクだって その弱点は
よく知ってるんだ
とほうもなくおろかな行いをする
とほうもなくハレンチなこともする
このボクの神経が
そんな風にする
みんながみんなで
めに見えない針で
いじめ合っている
世の中だ
おかしいことには
それぞれ自分をえらいと思っている
ボクが今まで会ったやつは
ことごとく自分の中にアグラかいてる
そしておだやかな顔をして
人をいじめる
これが人間だ
でも ボクは人間がきらいにはなれない
もっとみんな自分自身をいじめてはどうだ
よくかんがえてみろ
お前たちの生活
なんにも考えていないような生活だ
もっと自分を考えるんだ
もっと弱点をしるんだ
ボクはバケモノだと人が言う
人間としてなっていないと言う
ひどいことを言いやがる
でも 本当らしい
どうしよう
ひるねでもして
タバコをすって
たわいもなく
詩をかいていて
アホじゃキチガイじゃと言われ
一向くにもせず
詩をかいていようか
それでいいではないか
今、ぱらぱらと斜め読みしているところだけれど、「色のない旗」以降のページは心が痛くなる。心にいっぱい満ちた思いはどれほどだったか……。最後には1941.2.3 高円寺から姉さんへの手紙……『ボクは今こみ上げるくらいたのしいのです……』ではじまる映画への思い未来への思いまで、弾むような闊達な彼が溢れてくる。そう、「戦争は最も悪だ」
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